CAD/CAM YEARBOOK 2013
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22TECHNICAL REVIEW実物大臓器立体モデルを活用した手術支援の実際と歯科技工士の関わり竹内哲男*1/有地秀裕*1/松本 洋*2/中原龍一*3/水川展吉*4/吉岡徳枝*5/木股敬裕*2/尾﨑敏文*3/飯田征二*4/佐々木 朗*5/三野卓哉*6/前川賢治*6/森田 学*7/槇野博史*8/窪木拓男*1、6*1岡山大学病院医療技術部 歯科部門歯科技工室/*2岡山大学病院 形成外科/*3岡山大学病院 整形外科/*4岡山大学病院 口腔外科(再建系)/*5岡山大学病院 口腔外科(病態系)/*6岡山大学病院 クラウンブリッジ補綴科/*7岡山大学病院 歯科系代表副病院長/*8岡山大学病院 病院長はじめに 近年の歯科医療は、歯科用コーンビームCTや歯科用CAD/CAMシステムなどの先進デジタル機器の台頭により、従来のアナログ作業をばらつきの少ないデジタル作業に置き換え、より高品質で安全な治療や補綴装置を短期間で提供できるようになってきた。また、歯科用CAD/CAMシステムのオープン化にともない、「Digital Dentistry」の波はさらに加速することが予測され1、口腔インプラント治療や審美歯科に代表される自由診療のみならず、保険診療にもその技術は拡大され、患者にとってよりよい歯科医療を受けられる環境が整っていくであろう。 一方、歯科のデジタル化の流れは、歯科技工界にも大きな影響を与えている。従来の歯科技工は、ステップの多くが手作業であり、労働集約的であったが、歯科用CAD/CAMシステムの導入により、労働力の省力化がもたらされつつある。ひとつの補綴装置を製作するために必要な歯科技工士の総数は減少し、単純反復作業は機械化され、デジタルのみでは対応できないオーダーメイドなステップや最終調整を洗練された歯科技工士が担当するという方向に進むであろう。これは一見すると歯科技工士の必要性が減少し、歯科技工界の未来は暗いようにも捉えられる。しかし、歯科のデジタル化は歯科技工士の労働環境を改善するとともに、新しい歯科技工士のスタイルを確立するチャンスとも考えられる。今後の歯科技工士は、CAD/CAMシステムに代表される最新のデジタルツールを駆使し、コンピュータ画面上で補綴装置のデザインニングやプランニングを行う創造的で付加価値の高い知的な仕事へと変わっていくであろう。そして、最新のIT技術を駆使する先端技術者として社会から認識され、歯科技工士を志す若者が増える可能性もある。後継者不足が叫ばれるわが国の歯科技工界において、日本の高度な歯科技工を守り、発展させていくためには、このデジタル化をピンチではなくチャンスだと捉え、歯科技工士の在り方を再考するとともに新たな役割をも見出す必要があるのかもしれない。 このような背景の中、岡山大学病院では、医療技術部歯科部門技工室(以下、歯科技工室)所属の歯科技工士が、 CAD/CAMシステムを用いて実物大臓器立体モデルを製作し、医科・歯科の手術支援を行っている。本稿では、デジタル化時代を迎えた歯科技工士の新たな役割のモデルのひとつとして、この取り組みを紹介したい。 実物大臓器立体モデルを活用した手術支援の変遷と発展 1980年代に実用化が開始されたCTやMRIは、医療分野において画像診断技術を大きく進展させるとともに、ソフトウェアの進歩にともない、画像情報を三次元立体イメージとして表示することが可能となった。このComputer Graphicsを用いた方法は、ディスプレイ上で三次元画像を移動・回転さらには

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