プロフェッショナル デンティストリー STEP1
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治療を始めるにあたり特に大切なことは、『患者の希望と術者の方向性が一致している』ということである。『患者の思いと術者の思いが食い違っている』という状況は、もっとも避けなければならない(Fig.2-1)。 どんな患者でも、「できるだけよい状態になりたい」と願っているはずである。にもかかわらず歯科医師の勝手な思い込みで、「この患者に説明しても、どうせ矯正治療なんてしないだろう」「高額な自費治療を勧めれば、嫌がるのではないか」のように、治療内容の説明と費用の説明とを混同してしまう歯科医師が多いように思われる。 患者の年齢や職業、性別などはさまざまであり、それぞれが事情を持っている。まずは資料を採得して患者の状況を把握し、•今の状態になった原因は何なのか•解決するには何が必要なのか•治療の最終的なゴールをどこに設定するのかなどを、歯科医師はデスクワークとして考える必要がある。 そして患者に対してそれを説明し、最善の状況にするには何が必要か(原因除去療法)、今の問題だけを解決するには何が必要か(対症療法)を示し、患者自身から「どのようにしてほしいのか」を聞き出すことが重要である。確実な資料を採る目的は、単に『患者の状況を知る』というだけなく、そこから必要なこと、できること、できないこと、治療として必要なことを見極める、ということにつながるのである。 Case 2-1の患者は、単に「6クラウンが脱離した」ということで来院した。脱離したクラウンを装着しなおすこともできるだろう。「少しむし歯もあるし、適合もそれほどよくないので、形成しなおして、もう一度作りなおしましょう」と言うこともできるだろう。しかし『この患者にとって必要なことは何か』ということを考えたとき、•なぜクラウンが脱離したのか•年齢と比較して、どうして修復物がこんなに多いのかということに着目すべきである。1「何が必要なのか」を見極めているか?Chapter 2歯科治療の組み立てかたChapter 2-1患者の来院時にまず考えること28

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