プロフェッショナル デンティストリー STEP1
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20世紀までの歯科治療では、ある程度の咀嚼、ある程度の審美で、患者も術者も満足していたところがあった。しかしインプラントが登場してからは、従来考えていたよりも、もっと精度の高い状態を作り出すことが可能となった。その結果、矯正治療、インプラント治療、審美修復治療という3つの術式は、もはや避けて通ることのできないものとなった。つまり、矯正治療により歯列のバランスを図り、インプラント治療により強固な支台歯を作り、審美修復治療によってより天然歯に近づけるという概念――つまり骨格のバランスや歯列の安定、支持組織の健康など、機能と審美を一体のものとして考えることが、現在の歯科治療には欠かせない。 現在の日本における保険制度には、この3つの術式は導入されていない。ゆえに術後に安定したメインテナンスを行おうとしても、現実には問題点を残したままでのメインテナンスとなってしまう。本当の意味で治療を成立させようとするならば、矯正治療・インプラント治療・審美修復治療の必要性は、自ずと認識できるであろう。1矯正治療が必要不可欠な理由 日常的に歯科医院で多くの患者をみていると、高齢者で口腔内の健康状態を保っている人は歯列がきれいであり、矯正治療でいうAngleの分類Ⅰ級関係を持っていることに気づかされる。これは、このような条件が整えば、すべての人の将来において大きな問題が回避できる可能性があることを示唆している。ゆえに矯正治療の最大の目的は、『環境の改善』ということができる。審美的な要素や機能的な要素などその目的はさまざまであろうが、予防・治療・メインテナンスなど歯科治療全般において、矯正治療は大きな役割を果たすこととなる。 歯科治療が必要となる原因は、う蝕、歯周病、顎関節症などさまざまであるが、その大部分が歯列不正から起因している場合が多い。日本における歯科治療は、『問題が発生してから処置に入る』という保険制度が基盤となっているために、『病気を起こさないためにはどうするか』という観点がほとんど考えられていなかったように思われる。特に矯正治療は、一般的にはいまだに「単に審美的に歯並びをきれいにする」と捉えられている感がある。「来院するほとんどの患者の問題は、歯列に原因がChapter 1現在の歯科治療に必要な基本コンセプトChapter 1-1現在の歯科治療に欠かせない3つの治療術式10

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