102症例で知るインプラント日常臨床
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咬合サイナスリカバリー審美矯正GBRオーバーデンチャーメインテナンス7章 インプラントオーバーデンチャー93インプラントオーバーデンチャーへの設計変更必要度レベル評価田中譲治(千葉県開業)図5 インプラント破折脱落にともないアバットメントにて舌に咬傷を起こし、出血で来院。図6 アバットメントを外し磁性アタッチメントIODに設計変更。図7 義歯内面に磁石構造体が取り付けられる。4はノンクラスプとなり、取り外しが容易。図8 取扱いが簡単で、要介護も視野に入れると高齢者にはすぐれた補綴法と考えられる。表1 インプラントオーバーデンチャー(IOD)への設計変更必要度レベル評価(Tanakaのレベル評価)。実際にはこれに年齢と予想される介護者の協力度を加味して判定を行う。図1 高齢化にともない、固定性インプラント補綴では不良な口腔衛生状態を呈する場合がある。図2 特に下顎舌側においては、清掃が難しく不良な口腔衛生状態が多く見受けられる。図3 認知・理解能力不足になると口腔清掃がまったくできなくなる場合もある。図4 インプラント装着に仮着材を用いることが多いが、思わぬ脱落を招くこともある。症例の概要 長寿社会を迎え、インプラント補綴を考えるにあたり、手の不自由さや認知・理解能力不足、要介護なども考慮することが肝要となってきている。すなわち高齢にともない、固定性インプラント補綴では咬傷の原因となったり、口腔衛生が難しくなったりなどの問題を抱えることがあり、ある時期が来たら早めにインプラントオーバーデンチャー(IOD)に設計変更することが推奨される場合がある。そこで、どの程度の設計変更レベルになっているかの評価方法を検討した。処置内容とその根拠 評価法として、6項目のスコアを合計し、設計変更必要度をレベルⅠ~Ⅳの4段階で示す方法とした。顎堤吸収が高度であると、口腔前庭に食渣が溜まりやすく、さらに手の不自由さ、口腔機能低下、認知・理解能力不足傾向、ADL低下が加わると対応が困難となってくる。この評価表はこれらを基にしており、設計変更の時期を判断する指標として、またインフォームドコンセントとしても高い有用性があると考えられた。1.口腔清掃(舌や口腔周囲を含む)要介護になった際の口腔ケアに対する理解度や自発性にも関係してくる2.顎堤吸収度吸収度が高度の場合、口腔前庭への残渣の停滞を引き起こしやすく、また、下顎舌側の清掃がより困難となる3.手の不自由さ固定性補綴では本人による口腔衛生が困難となり、取り外し容易な補綴が望まれる4.口腔機能(含嗽,嚥下等)含嗽は口腔前庭の残渣など口腔周囲の衛生状態に影響する嚥下の低下は誤嚥性肺炎の発症の原因となる5.認知・理解度力不足認知症になると新規に義歯を使用してもらうことが困難となるため、傾向が現れた時点で義歯の使用を習慣にすることが肝要6.ADL(日常生活動作)歩行・食事・排泄・入浴・着替え・整容(見だしなみ)・意思疎通などを基に総合評価評価方法:6項目各スコア(1~5ポイントの合計によりレベル度がⅠ~Ⅳの4段階で評価される)※スコア合計10未満は必要なしと評価されるスコア合計評価結果レベルⅠ10~14設計変更の検討が必要レベルⅡ15~19設計変更が望ましいレベルⅢ20~24設計変更を推奨レベルⅣ25~30設計変更が必要120

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