102症例で知るインプラント日常臨床
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アジア口腔インプラント学会セッションはじめに 2007年のITIコンセンサスレポートでは、歯牙欠損部位における軟組織欠損を、審美的リスク評価のハイリスクに分類した。インプラント歯科学では、菲薄な歯周組織を有する患者への軟組織移植術はほとんど予知性がないと考えられている。菲薄な歯周組織を有する患者が大部分である東洋の歯科医師としてはそのジレンマを克服し、菲薄な歯周組織に対して高い予知性を持ったアプローチ方法を確立することが挑戦であると同時に使命でもある。インプラント周囲の薄い歯肉に対するソフトティッシュ・グラフトPaul P. Lin(台湾歯科審美学会会長、台湾歯周病学会会長)訳/黒嶋伸一郎1)、澤瀬 隆2)(長崎大学大学院医歯薬総合研究科 展開医療科学講座口腔インプラント学分野・助教1)・教授2))I. インプラント周囲組織の生物学的差異による外科手技の選択A. 不十分な血液供給:遊離歯肉移植を検討する前に、可能であれば有茎歯肉弁移植を選択するB. 脆弱な線維性付着:縦切開を最小限とし、歯間乳頭を温存するC. 刺激への乏しい反応性:3~6ヵ月の定期検診D. 疾病への早い反応性:徴候および症状が出現したら早期に積極的な介入を行うII. より良い機能性と清掃性を求めるために、インプラント周囲に角化組織(≧3mm)が必要である。角化組織は以下のA~Dを防止するのに役立つA. 深部組織への炎症の波及B. インプラント周囲粘膜組織の退縮C. 刷掃がもたらす損傷D. 審美的リスクIII. 予知性のある軟組織移植のためには有茎歯肉弁移植を利用すべきであるA. ロールテクニック:二次手術時における小規模な頬側軟組織移植方法(添付された解説を参照のこと)B. VIP-CT(血管介在型骨膜‐結合組織):緊密な封鎖性の獲得、垂直的造成ならびに歯間乳頭再建のための方法IV. 予知性の高い軟組織移植を行うためには、結合組織移植を利用すべきであるA. ドナー部においては、十分に厚みのある移植片を獲得するために、できるだけ薄い被覆歯肉弁とし、骨膜は健全の状態を保持しておくB. レシピエント部においては、歯肉溝を通過せず、移植側から3mm離して部分層弁でポーチフラップを形成する10

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