歯周病患者におけるインプラント治療
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27CHAPTER 4歯周病患者におけるインプラント治療の現在1.問題化しているインプラント周囲炎 インプラント治療の普及とともに、インプラント周囲炎が大きな問題となってきている。天然歯喪失の主な原因が歯周病であることを考えると、われわれ臨床医にとって、患者の歯周病の既往がインプラント治療に与える影響を正しく理解することは重要である。 この項では歯周病の既往を持つ患者のインプラント周囲炎、インプラント喪失のリスクを考察し、それらの患者を治療する際にどのように対処すべきかのガイドラインを策定する。2.インプラント周囲炎の病因 インプラント周囲炎の発症メカニズムはすべてが明らかになったわけではないが、歯周炎とインプラント周囲炎では多くの類似点が指摘されている。 歯周炎、インプラント周囲炎の主たる病因はともに細菌である7)。これについては、歯周炎、インプラント周囲炎に罹患した歯周ポケット、インプラント周囲ポケットからは、Red Complexの細菌など同様の細菌が検出される8)ことが明らかになっている。しかし一方でインプラント周囲ポケットからはStaphylococcous、Streptcoccus、Candidaなどが検出されるという報告もあり、歯周炎の細菌叢とはまったく同じではない可能性も示唆されている9)~11) 。2 歯周病の既往がインプラント治療に与える影響SUMMARY① インプラント周囲炎の病因は、歯周炎の病因と重なる部分が多い。② 歯周炎の既往のある患者ではインプラント生存率、成功率がやや劣る。③ 歯周治療後の残存ポケットは、インプラント周囲炎、インプラント喪失のリスクとなる。④ 喫煙はインプラント周囲炎、インプラント喪失のリスクとなる。 また、遺伝的素因が歯周炎の発症、進行において役割を果たしていることを考慮すると、歯周炎の既往を持つ患者はインプラント周囲炎にも罹患しやすいと考えるのは妥当である。インターロイキン1型などの炎症性サイトカインの中の特異的な遺伝子型(genotype)は歯周炎を重症化する遺伝的なマーカーであることが知られているが12)、この特異な遺伝子型はインプラント周囲炎患者のポケットからも認められることがある13)。さらに後述する歯周炎の既往とインプラント周囲炎、インプラント喪失率の関係は、これら歯周炎の既往を持つ患者が、インプラント周囲炎発症のリスクを持つことを立証するエビデンスである14)。近年のレビューではインプラント周囲炎発症の強いリスクファクターとして、プラークコントロールの不良、歯周炎の既往、喫煙が挙げられている15)。その他インプラント周囲炎の病因を表1に挙げる7)。歯周炎の病因と多くの共通の因子を持つが、・上部構造、インプラント体の破折・�歯槽堤のボリューム不足、または埋入位置不良による、インプラント・スレッドの露出・骨造成の失敗はインプラントに固有の因子である。さらにセメント固定式のインプラントにおける、インプラント周囲溝内の残存セメントも、インプラント周囲炎の病因の1つとなっている16)。

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