歯周病患者におけるインプラント治療
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15CHAPTER 2治療計画の立案4)う蝕治療 残存歯にう蝕がある場合、その窩洞は感染源となるため早急に治療する。窩洞が小さい場合は、充填修復処置にて完了する。窩洞が大きい場合は、歯冠修復あるいは暫間被覆冠などで修復する。5)咬合治療 インプラント埋入手術と合わせて、補綴治療および咬合回復を念頭において検査を行い、治療計画を説明する。その際、インプラント治療による治療結果や治療のリスク、治療期間および治療費についても説明することが望ましい。3.歯周組織検査(再評価) 歯周基本治療終了後、再評価を行う。歯周精密検査によって歯周組織の改善を評価する。4.インプラント埋入手術 歯周基本治療後、プラークコントロールの向上にともない歯周組織の炎症が改善し、インプラント手術前には、プロービングポケットデプスが浅くなっていること(3~4mm以下)が望ましい(図1:インプラント埋入手術A)。しかし、依然として深い歯周ポケットが存在する場合は、歯周外科治療を行った後、インプラント治療に移行することが望まれる(図1:インプラント埋入手術B)。1)診断用ワックスアップおよびステント製作(CT画像撮影) インプラント治療の確定的な診断を行うために、石膏模型にて診断用ワックスアップを行い、その後、インプラントの埋入位置および方向を決定するための診断用ステントを製作する。 二次元的なデンタルエックス線写真やパノラマエックス線写真では、骨質や骨量に関して十分な情報を得ることはできない。しかしCT撮影を行えば、インプラント埋入部位の三次元的な骨形態、骨質および骨量、周辺の解剖学的構造を知ることができる。最終的には診断用ステントを装着して撮影されたCT画像を参考にして、インプラント埋入予定部位、埋入方向、埋入本数、インプラント体の長さ、径の大きさを決定することが望ましい。2)インプラント埋入手術 CT撮影に使用した診断用ステントを外科用ステントとして利用し、インプラント体を埋入する。インプラント埋入手術には1回法と2回法がある。埋入後の骨吸収に有意差はなく、手術部位の状況、インプラントの種類に応じてどちらかを選択する1)。また、インプラント埋入手術で重要なことは確実なオッセオインテグレーションを得ることである。そのため、術中のインプラント体の初期固定、および術後の十分な免荷期間を考慮する必要がある。5.�口腔機能回復治療およびインプラント上部構造製作 インプラント周囲歯肉に炎症所見がなく、インプラントがオッセオインテグレーションを得ていることが確認できたならば、インプラント上部構造を製作することができる。インプラント上部構造にはスクリュー固定式とセメント固定式があり、それぞれ、長所と短所がある。さまざまな状況を考慮したうえで、上部構造の設計を行うことが望まれる。 最終上部構造の製作に移行する前にはプロビジョナルレストレーションを装着し、咬合、発音、審美性などを確認する。通常はプロビジョナルレストレーションによって得られた情報を参考にして、最終上部構造製作へ移行することが望ましい。 しかし、1歯あるいは少数歯欠損で咬合や審美性に問題がない場合には、オッセオインテグレーションを確認した後、ただちに最終上部構造を装着することもある。6.歯周組織検査(再評価) インプラント上部構造を装着し、咬合の安定を確認した後、歯周組織検査(再評価)を行う。メインテナンスに移行する目安としては、インプラント周囲のプロービングデプスが4mm以下、動揺度0度、デンタルエックス線写真(およびその他エックス線写真)において、病的な歯槽骨の吸収が認められない場合などが挙げられる。7.メインテナンス 天然歯とインプラントが混在する口腔内においても、歯周病患者のメインテナンスと同様に行う。数か月ごとに定期検診を行い、口腔清掃法の指導、およびプロフェッショナルケアを行う。またインプラント部位の咬合検査は注意深く行うよう心掛ける必要がある。

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