摂食・嚥下機能改善と装置の作り方
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13 摂食機能療法は摂食・嚥下障害を有する患者さんに対して行う訓練・指導であり、その効果は患者さんの病態により異なってきます。「訓練」の効果を大きく分けると、「機能回復(小児の場合は獲得)」「機能維持」「機能悪化防止」の3つの概念に分かれます(図6)。摂食機能療法を行っていくにあたり、この3つの概念は非常に重要であり、このことを見据えて行わないと患者さんにとって過剰な負荷を与えてしまうだけでなく、医療者側も消耗してしまいます。1)機能回復 「機能回復」の代表的なものは、脳血管障害後の回復期の患者さんの場合です。脳血管障害は、一般的には発症直後がもっとも機能が悪く、その後徐々に回復していきます。その時期に適切な摂食機能療法を行うことによって、誤嚥性肺炎や窒息を起こすことなく摂食・嚥下機能が回復します。この時期は、回復期病院に入院中のことが多く、訪問歯科が担当することは多くありません。急性期病院から直に在宅や施設に退院してきた場合は、在宅や施設で訪問歯科が回復期の摂食機能療法を担当します。脳血管障害後以外では、入院や過度の制限などで廃用を生じている患者さんの場合です。廃用とは「使わないことによって生じる機能低下」のことを指し、摂食機能療法で機能回復が望めます。2)機能維持 「機能維持」は、訪問歯科がもっとも多く担当するであろう病態です。目に見えた回復はみられないものの、今の機能を維持するために摂食機能療法を行います。代表的なものは脳血管障害後数年経過した慢性期の患者さんであり、廃用を生じないことを目標に行う摂食機能療法です。この段階で機能回復を目指すのは非常に困難であり、回復を目指すことは患者さんに過度の負荷を課すことになりかねません。また、慢性期の患者さんに対して回復を目指した訓練を行うと、医療者側としても思った効果(機能回復)が出ないために、精神的に消耗してしまうので注意が必要です。図6a,b 摂食機能療法の効果と代表例。対象症例の状態によって目指す効果は異なる。機能回復代表例:脳血管障害後の回復期病院での機能訓練a機能維持代表例:脳血管障害後の慢性期在宅での食事介助bnsweruestionuu摂食機能療法の効果を教えてください第 1 章摂食機能療法とは<摂食機能療法の効果>

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