ひとつではない、噛める総義歯の姿
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20ケースプレゼンテーション1.本法が目指す義歯の概念 筆者の師は、故・丸森賢二先生(以下、丸森氏とする)である。丸森氏が目指した義歯製作は「落ちない、浮かない、噛んでも転覆しない義歯」であり、筆者の義歯製作の基本概念は、この目的を達成するための技工テクニックとなっている。以下、丸森氏から学んだ義歯製作過程について簡単に説明する。1)無圧概形印象のすすめ 丸森氏の概形印象採得は、「落ちない、浮かない咬合床」を製作するために、上顎ではアルジネート印象材に通常よりも水を多めに入れて流動性を高め、下顎は、石膏流し込み法による開口無圧印象採得を実践していた。そして、食事をする時に口を開ける程度の開口量で印象採得を行った結果、浮かない咬合床が製作できると述べていた。 今回の義歯製作に関しては、5人の歯科技工士がほぼ同一模型から仕事をスタートしているので、読者には実際の丸森氏の概形印象採得法が実践されていないことをあらかじめご承知願いたい。2)一次咬合採得後、4つ球法にて二次咬合採得 上述の落ちない、浮かない咬合床にて一次咬合採得を行い、咬合器に模型を付着する。そして、下顎に4つの6mm球を植えた咬合床を製作後、4つ球を使って二次咬合採得を行う。3)4つ球法ならびにゴム噛み試験を用いて人工歯配列位置を検討 同時に、4つ球を指で押し、ゴム噛み転覆試験を通して咬合床が転覆しない人工歯配列位置を模索する。基本的には、上顎では歯槽頂上に人工歯の舌側咬頭、下顎では歯槽頂上に人工歯の中央窩に位置づけて配列を行う。上下顎の歯列弓が大きくずれる場合は、舌や頬筋などの口腔周囲筋などを考慮して配列位置をそれぞれ変更し、できるだけ転覆しない位置に人工歯配列を行うことを目指す。また、人工歯の配列角度についても上下それぞれの顎堤形態によって変える必要がある。4)ワックスデンチャー試適と咬座印象 ワックスデンチャーの口腔内試適時に、審美性をチェックする。そして、ゴム噛みによる転覆試験を再度行い、義歯床が転覆しない位置に人工歯配列が行えているかどうかを確認する。確認終了後、最終咬座印象を行って、レジン重合を行う。5)重合後のリマウントによる後方運動も含めた咬合調整 重合後、咬合器にリマウントして最終咬合調整を1「落ちない、浮かない、噛んでも転覆しない」義歯製作生田龍平

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