歯科臨床イヤーノート
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SECTION 4100SECTION4医療面接 本章では,患者中心の全人(包括)的総合歯科医療における医療面接について述べるが,歯科医師は,医療面接が治療とともに患者個人や家族への医学的な介入であり,それにより患者個人ならびに家族の日常生活に何らかの変化(変容)をもたらすことをつねに意識下において行動する必要がある.また,最初の医学的介入である初診の医療面接で築かれた患者と歯科医師との関係性(相互協力)は,患者にとっては歯科医師の信頼へ,あるいは期待する医療への信頼へ,歯科医師には患者を援助すること(治療的関係や癒しの促進)へとつながることを忘れてはならない1).そして医療的介入に際しては,つねに医療者は自らを律しながら,生活者である患者(や家族)の自立(律)を促すという援助の姿勢〔プロフェッショナリズム:福利優先,自己決定権の尊重,社会正義や公正性(social justice)〕を心がけるべきである.1)患者中心の医療に求められる患者-歯科医師の関係性 患者中心モデルでは,患者個人を尊重し,医療者との関係性をそれぞれの専門家同士の出会いであるととらえる2).すなわち,「患者は自分の抱える病や病苦そしてそれにかかわる人生(の物語)についての専門家」であり,「医療者は病気(疾患)の治療(の物語)についての専門家」であることで,それぞれが医療においての対等の人間関係(相互協力)を築き,それを強化することが求められているといえる.そのため,病と病苦そしてそれにかかわる人生(生活)の専門家である患者(や家族あるいは重要他者)とのはじめての出会いである初診の医療面接では,歯科医師は病気の診断・治療やその後に続く,治療や癒し,健康や予防,そしてケアリングなどの患者個人の支援にかかわるプロセスに至るまでに,強固な関係性の構築に取り組む必要がある3)(図1).1.患者-歯科医師関係医療者医療:生物科学医術(アート)生活・社会対等患者?病・病苦家族思い図1 患者-歯科医師の関係性.

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