さわる咬合, さわらない咬合
3/8

第2章 ブラキシズムと咬合──知覚過敏,咬合痛,歯の摩耗,歯周組織への影響015 歯の支持組織は,歯軸に対して垂直な力には比較的耐久性がある.咀嚼と嚥下の生理的機能活動で,下顎は垂直方向に動く.歯に作用する方向も,問題がなければ垂直方向である.しかし,力の方向が偏位したり,接触の回数・量の増加などが,歯および支持組織に対して損傷を起こす可能性がある.歯にとってメカニカルストレスとなる歯の接触を表3に示す. パラファンクションの歯や歯周組織への影響には,①歯の摩耗②知覚過敏③楔状欠損(アブフラクション)④歯冠,歯根破折⑤修復物の破損⑥歯の咬合痛⑦歯の支持組織の損傷などがあげられる.2-3パラファンクション・非生理的機能運動時の歯への影響 咀嚼時の顎運動は,「上下顎歯が接触するかしないかの一瞬で,速やかに離れる」という動作の繰り返しであるため,歯は水平的・直線的な摩耗はしない.たとえば“するめ”をぎゅっと咬みこむ動作であっても,歯と歯の間には食材が存在しているため,歯はそんなに摩耗しない.生理的機能活動時の最大咬合力は約12kg/cm2,非生理的機能活動時の最大咬合力は74kg/cm2と,その差は非常に大きい(前述表2)5,6.このように,パラファンクションで多大な力で歯同士が擦れあわないと,図5のような平面的な摩耗は生じない. では,咬合との関連はどうであろうか?対処:歯の摩耗だけが主訴であれば,咬合はさわらない.基本的に歯は削らない.ナイトガードやadd on調整19(add on adjustment:盛り足す咬合調整)で防御を考えるべき! ただし,前歯に審美的な問題が生じている場合2-4ブラキシズムによる歯の摩耗─咬合をさわる? さわらない? 1. CR-ICPのスライドでの負荷①早期接触を受け止める負荷② CR-ICPのセントリックスライドを受け止める負荷 2.機能時の咬頭干渉①作業側での干渉②非作業側での干渉③前方運動での干渉④ 前側方運動(①~③の中間運動)での干渉 3.パラファンクショングラインディング,クレンチング*1,2は咬合調整や歯冠修復治療でコントロール可能表3 歯にメカニカルストレスとなる歯の接触.メカニカルストレスとなる歯の接触は,上下顎歯のさまざまな動きが原因である.咀嚼などの意識下の機能時よりも,パラファンクション時の歯の接触が多大な負荷となる.図5 歯の摩耗.咀嚼は歯と歯が接触した瞬間に離すという反射的動作であるため,歯が水平的に削れるような動きはしない.多大な力で歯同士が擦れ合わないと,このような水平的摩耗は起きない.パラファンクションの歯への影響歯の摩耗を主訴に来院されたら

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です