歯科インプラント治療のリスク度チェックとその対応
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83Chapter6 神経・筋疾患2 認知症と歯科インプラント治療2認知症のリスクと初診時にチェックすること 認知症患者への対応について,意思疎通の状態をもとに診断の流れとリスクの関係をフローチャートで示す(図2).意思疎通が不可能な場合は,基本的に治療は禁忌と考える.本疾患は,合併症および病状の進行がない場合には,リスクは認めるものの,治療の可能性はあると考える.しかし,その場合でも患者本人のみならず,家族に対しても説明し,同意を得ておく必要がある.本疾患においては,どのような状態であっても,基本的には家族の同意が得られない場合は,治療は不可と考える.家族の同意が得られていても,病状の進行が認められる場合や合併症がある場合には,歯科インプラント治療による利点に乏しく,またQOLの改善も期待できないため,リスクは高くなり治療は避けるべきと考える. 歯科処置に対するリスクに関しては,脳卒中に準じることとなる.認知症であっても初期で通常の日常生活を送っていれば,初診時に判断することが難しい場合もある.とくにアルツハイマー病の初期であれば,本人,家族も気づかないこともあり注意が必要である.脳卒中の後遺症であれば,その他の麻痺や運動障害が認められるため,判断は比較的容易である.リスク度は,認知症を疑う症状(表1)がみられたら,患者本人のみならず家族からの問診も必要となる.認知症の症状がみられたら,たとえ軽度であっても今後進行していくことが予想されるため,積極的な治療は避けるべきである(表2).歯科インプラント治療禁忌今後進行する見込み治療可能治療不可中等度のリスク治療不可重度のリスク治療不可初 診認知症の既往があるとの訴え家族の同意あり家族の同意なし家族の同意あり家族の同意なし家族の同意あり家族の同意なし認知症中等度~重度かかりつけ医と連携かかりつけ医と連携 進行状況を把握意思疎通不可能意思疎通可能合併症あり合併症なし他合併症なし他合併症あり記憶障害軽度図2 初診時の認知症患者へのリスク度チェックのフローチャート.表1 認知症を疑う症状同じことを言ったり聞いたりする最近のできごとを思い出せない大事な物をなくしたり,置き忘れる今まで好きだったものに対して興味・関心がなくなった慣れているところで道に迷った些細なことで怒りっぽくなった本人が物忘れを自覚していない日常生活に支障がある行動・心理症候(妄想,幻覚,不穏,徘徊,その他)

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