歯科インプラント治療のリスク度チェックとその対応
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822 認知症と歯科インプラント治療認知症と歯科インプラント治療廣安一彦1) 上田 潤1) 渡邉文彦2)1)日本歯科大学新潟病院口腔外科・口腔インプラントセンター 2)日本歯科大学新潟生命歯学部歯科補綴学第二講座Chapter6神経・筋疾患221どのような病気か 認知症は,正常に発達した知的機能が後天的な器質性障害により持続的に低下し,日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態である.日本での認知症患者数は,2010年の208万人(65歳以上の7.2%)が2035年には376万人(65歳以上の10.7%)に増加すると推計されている(厚生労働省老健局「高齢者介護研究会報告書『2015年の高齢者介護』」).認知症のなかでは,アルツハイマー病がもっとも頻度が高く,脳血管性認知症とレビー小体型認知症が続く.認知症のスクリーニング検査として,Mini-Mental State Examination(MMSE)と長谷川式簡易知能評価スケール改訂版(HDS-R)が一般的に用いられる.その他,頭部CTまたはMRI,脳血流SPECTで鑑別診断を行う.脳血流SPECTは早期診断に有用である.①アルツハイマー病 アルツハイマー病は,記憶力の低下を中心とした進行性認知症とびまん性脳萎縮をきたす疾患(図1)で,家族性と孤立性に分けられる.また,発症年齢が65歳未満の早期型と65歳以降の晩発型に分類される.症状としては,初期は記憶障害から日常生活に支障が出るようになる.中期には場所がわからなくなり,徘徊などを行うため,介護が必要となる.末期には人物もわからなくなり,寝たきりへと進行していく.認知症の進行には,環境要因が影響するとされ,患者をとりまく生活環境の整備,介護者への指導が重要である.基礎疾患の悪化が認知症を悪化させることも考えられるため,食事,運動などにより全身状態を安定させることも必要である.予後としては,栄養障害や脱水,肺炎などの感染症,脳卒中,心疾患などの合併症で死に至ることが多い.②脳血管性認知症 脳血管性認知症は,脳血管障害によるもので脳梗塞後に発症することが多い.痴呆のほかに,脳血管障害による片麻痺や運動障害がみられる.高齢者で脳血管障害をともなうアルツハイマー病との鑑別には注意が必要であり,その診断にはSPECTが有用である.本疾患は,基礎疾患の治療と高血圧や糖尿病などの危険因子に対する治療が基本であり,進行を予防し,治療が可能である.③レビー小体型認知症 レビー小体型認知症は,特定の脳神経細胞内に,特異な変化(レビー小体)が出現することにより発症する認知症である.認知障害の変動,パーキンソニズム,繰り返す具体的な幻覚や妄想,うつ症状,転倒などがみられる.認知症全体の1割程度を占めている.図1 アルツハイマー病患者の脳のCT写真.

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