歯科インプラント治療のリスク度チェックとその対応
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69Chapter5 代謝疾患3 骨粗鬆症と歯科インプラント治療3歯科インプラント治療に与える影響と対応 骨粗鬆症は,全身の骨においてカルシウムの低下が起こっており,骨の傷を治す能力が低下しているため,顎骨の中に埋め込まれたインプラント体の周囲で骨組織の形成が行われなくなり,骨接合が獲得できない.骨接合していないインプラント体には,上部構造を装着し,咬合させても,すぐに脱落する.また,歯科インプラント治療が終了した後に骨粗鬆症になった場合は,インプラント体周囲で起こっている咬合圧による骨破壊を修復して,新しい骨接合を獲得する力がなくなることで,インプラント体周囲の骨の吸収が進行し,インプラント体が脱落してしまう.1)歯科インプラント治療は可能か 骨粗鬆症と診断されている症例では,①骨接合の獲得が難しい②上部構造物装着後に早期に脱落する可能性が高い以上のリスクがある.このことを患者に説明し,承※女性で 既往歴の ある場合は, さらに要注意.初 診年齢・性別・閉経の時期既往歴として甲状腺疾患,性腺機能不全症,クッシング症候群,壊血病,ステロイド服用,抗がん剤投与,関節リウマチ,糖尿病,肝疾患,透析等をチェックチェック既往歴ありチェック既往歴なし男 性女 性生理ありチェック既往歴ありチェック既往歴なし中等度のリスクリスクなし閉 経諾を得たうえで治療を行うことは可能である.ただし,ビスフォスフォネート(以下BP)系薬剤の内服が行われていないこと,他の全身的疾患を合併していないこと,さらには,喫煙者でないことの条件がクリアされなければいけない.2)歯科インプラント治療に対するリスク度 リスク度は“中等度”であるとの認識が必要である.3)リスク度が高いケースとその対応①YAMが70%以下 YAM(young adult means:若年成人平均骨塩量)が70%以下の場合は,整形外科などの専門医に紹介し,治療を受けるよう勧める.ただし,BP系薬剤での治療を避けてもらうよう,紹介先には話しておく.図2 初診時の骨粗鬆症リスク度チェックのフローチャート.

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