口腔外科治療 失敗回避のためのポイント47
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242第4部 術後管理編Ⅰ オトガイ神経障害の原因下顎神経は,頭蓋底の卵円孔を出て下方に向かい,下顎骨の下顎孔からオトガイ孔までを下歯槽神経,そしてオトガイ孔から下唇,口角部,オトガイ部皮膚に分布する部分がオトガイ神経,部分的に名前を変えて走行します.歯科治療中にオトガイ知覚異常が出現した場合は,この下歯槽神経またはオトガイ神経への直接的な障害が一般的に考えられます.抜歯,歯根端切除,嚢胞摘出のみならず,頬小帯切除や口腔前庭拡張などの補綴前処置も該当します.日常診療で頻度の高い保存治療でも根管治療や根管充填材による物理的・化学的損傷が起こった事例がありました(図4‒7‒1a~d).まずは治療前に画像を通して下顎管の位置を確認しておきましょう.事前に下顎管の一般的な走行の解剖学的な特徴をつかんでおくことも重要でしょう(図4‒7‒2,3).オトガイ神経についても同様です.斜め後上方に向いたオトガイ孔から出た神経は直ちに骨膜を穿孔し粘膜下を3方向に分枝し皮膚へ向かいます.この辺りを切開するときは骨膜下で行うこと,補綴前処置では粘膜直下の深さにとどめ,骨膜上付近に切り込まないことが肝心です.Postoperative Edition 7オトガイ・舌の知覚異常とその対応下歯槽神経根充材根充材が充満●根管充填材の漏出による下歯槽神経の損傷図4‒7‒1a~d 根管治療中における下歯槽神経損傷.根管充填材の下顎管への漏出がみられ,オトガイ神経の知覚は完全に脱失していた.

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