口腔外科治療 失敗回避のためのポイント47
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98第2部 手術の基本編Ⅰ 3種類のメス刀ここでは,歯槽部の手術における切開・剥離・骨削,軟部組織の手術(舌・口唇・頬粘膜・口底)における切開と剥離について説明します.口腔内の手術では,No.11,12,15の3種類のメス刀を用いますが(図2‒6‒1),骨膜の切開もできるNo.15メスを頻用しています.湾曲したNo.12メスは,歯冠遠心部や上顎結節部の切開に用い,鋭利なNo.11メスは,軟部組織の粘膜切開に用います.Ⅱ 歯槽部の手術No.15メスはペングリップで把持してレストをおき,メス先が滑ったり予定切開線から外れないようにします(図2‒6‒2).メスの刺入角度は可及的に粘膜に対して垂直です.斜めに切開を加えると,薄くなった粘膜断端の血流が悪化し,術後の創哆開や治癒遅延を起こしてしまいます.また切開を骨膜までしっかり行わないと,粘膜骨膜弁の剥離挙上が上手くいきません.粘膜骨膜切開のコツは,一気に骨膜まで切開せずに,まず骨膜上切開を加え,再度同じ切開線に沿って骨膜をしっかり切開することです.また,歯肉縁切開はメスを歯に沿わせながら行い,とくに縦切開との境界をきちんと切離すると,剥離操作が容易に行えます.剥離操作には骨膜剥離子を用います.付着歯肉部分など,粘膜骨膜弁と骨との結合が硬く,剥離が難しいところから始めると良いです.図2‒6‒3a~dに示すように,歯頚部切開と縦切開でできる粘膜骨膜弁の角から始め,Partch(パルチ)の切開などは端から剥離します.まず幅の狭い骨膜剥離子を骨面にあて,梃子のように組織をもち上げて剥離挙上のきっかけをつくり,少し剥離を進めたのち,幅広の骨膜剥離子でより広い範囲を挙上します.骨削では,骨削範囲の設定が重要です.埋伏歯抜去では歯冠の最大膨隆部が視認できるまで,顎骨内嚢胞摘出では嚢胞の75 %ほどの大きさの開窓が目安の1つです.また,埋伏歯抜去では皮質骨の骨削が最小限になるよう歯冠周囲の骨削を行い,へーベル挿入の足場となる操作の支点を確保します.嚢胞摘出では,まず小さい範囲でバーを軽くあてながら骨削を始め,嚢胞壁に達したら骨膜Basic Operative Edition 6切開・剥離・骨削図2‒6‒1 口腔外科手術で用いるメス刃.No.11,No.12,No.15(左から).

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