口腔外科ハンドマニュアル’12
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DENTAL SURGERY UP-TO-DATEChapter1-122 1980年代にMarc Levoyらによるエックス線CTを用いた医用3次元画像の高速再構築技術1は,それまでの2次元断層像の画像診断や治療計画を3次元へと変革した.その後,医療分野の画像化技術は加速度的に進歩し,人体内部の様子が画像情報としてかなり正確に表現できるようになってきた.西欧のハイデルベルク大学やフライブルク大学を中心に外科手術支援システムの研究開発が行われはじめ,2000年にはJ. Xiaら2~7の顎顔面変形症治療システムなどが発表されている.一方,国内でも1992年には小野らによって3次元的な顎顔面骨格の評価システムの研究が行われている.このように医療画像がデジタル化されたことにより,必要とされる情報を抽出してコンピュータで処理ができるようになるのと同時に,エックス線CT装置の急速な発達による3次元CTの普及により,実物大立体モデル,複合現実感(バーチャルリアリティー)へと臨床応用が先行してきた.これらは,口腔を含む複雑な顎顔面領域において,それを構成する支持組織の変形や神経・脈管といった解剖学的構造物の診断が治療方針の決定に密接に関連する顎顔面領域で従来から切望されてきたものと一致した結果と考えられる.現在では,これらの医用画像の3次元診断や外科手術の支援システムは,医療分野と工学分野の共同研究の代表的な分野となり,“コンピュータ支援外科手術(Computer Aided Surgery:CAS)”とよばれる研究分野として位置づけが行われるようになっており,画像解析の基礎から複合現実感に至る多くの研究開発が行われている. 今後,これらの技術も新しい技術により,どのような方向へ発展していくのか予測しがたいほどである.コンピュータ支援外科手術は,身体の各部位の皮膚・口腔粘膜,軟部組織,骨,血管など各種臓器の画像情報を総合的に把握して治療方針を決定するシステムである.また,これらの画像処理技術を利用して手術シミュレーションを行うことで難易度の高い手術でも安全に行うことが可能となり,経験の浅い術者でもコンピュータによりマニュアル化された術式を利用してイメージトレーニングを繰り返すことで,先人の経験をある程度会得することができる.さらに,この3次元可視化された画像情報はわかりやすく,学生や患者家族への病状と手術法の説明に髙木多加志東京歯科大学口腔外科学講座連絡先:〒261‐8502 千葉県千葉市美浜区真砂1‐2‐2Computer Aided Surery System of Oral and Maxillofacial Region, Present and FutureTakashi TakakiDepartment of Oral and Maxillofacial Surgery, Tokyo Dental Collegeaddress:1‐2‐2, Masago, Mihama-ku, Chiba-shi, Chiba 261‐8502特集1:顎顔面外科の技術革新巻頭アトラス 最新の外科潮流を知ろう口腔顎顔面外科手術支援システムの現状と将来展望

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