歯列育形成の実際
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142乳歯列開咬:乳切歯の挙上乳歯列期(ⅡA)混合歯列期(ⅡC)CASE4歯列・咬合の継続管理の実際Ⅶこの症例はおしゃぶりを使用したことによる著しい開咬である。上顎乳歯列弓は狭窄し、特に上顎乳歯列弓の前方部分は強度の狭窄でV字型をしている。そしてこの上顎乳歯列弓の狭窄のため、片側性の交叉咬合となっている。乳歯列期の交叉咬合は、永久歯列となっても交叉咬合となることは小児歯科学の本にも記載されている通りである。もしこのまま放置されたら交叉咬合は治らないばかりか、この極端な開咬と狭窄による骨の変形に適応してしまった周囲組織および顔面頭蓋は、たとえ小学校高学年の頃に矯正歯科治療を受けたとしても、機能的な問題を残す可能性があり、完全によい形になるとは考えられない。本症例は2歳の時から歯列育形成を継続して、乳歯列弓をよい形にし、上下顎の位置関係を正しくした状態から発育するようにしたので、この影響は顔全体によく現われている。4歳の時には標準乳歯列弓に近いよい形の乳歯列弓の形態になり、上下顎の上下的側方的な位置関係を正しくした状態で、その後永久歯への交換が行われている。よい(乳)歯列弓の形と、上下顎の正しい位置関係に適応した状態で、顔面骨や口の周囲のそれぞれの筋が発育していくので、顔の表情から現われるその子のイメージは、大きく変化する。この患者の場合、永久切歯が萌出する頃は、骨の形はよくなっており、小学生時代はずっとよい歯のままである。もちろん継続管理によってう蝕予防が着実な成果をあげ、カリエスフリーを達成している。初診時の主な所見年齢:2歳9か月 女子乳歯列弓形態: 上顎V字型咬合状態: 関係乳歯列Ⅲ級、 関係乳歯列Ⅱ級 ( 未萌出、 半萌出)主な処置方針: 乳歯列弓(特に上顎)側方拡大、 挙上CCCCAAEEEE 左側乳臼歯部は逆被蓋、片側性の交叉咬合となっている。 下顎骨が左方に偏位しているもので、下顔面も左右非対称になっている。 乳歯列弓は、前方が特に狭窄、V字型となっている。3歳4か月 まず上顎の側方拡大を急いで行った。前突感はかなり目立たなくなった。図Ⅶ-4 2歳11か月の時、最初にいれたプレート(前段階プレート)。 おしゃぶりをやめさすことより、定められた時間プレートをいれてもらうことのほうを重要視する。「おしゃぶりはときどきやっていてもいいよ」といった具合である。もちろんプレートは、○○ちゃんが将来プリンセスのように美しくなるためのものである。母親に対するmotivationだけでなく、幼児本人に対するmotivationも成功し、本人は将来の目的に向かって楽しく来院、子どもながらとにかく努力してくれた。図Ⅶ-2 挙上ポイントと唇側誘導線。図Ⅶ-3 本症例前段階プレート( は未萌出)。2歳9か月 初診時2歳11か月 前段階プレート(慣らしプレート)。EE2歳9か月2歳9か月2歳9か月2歳9か月2歳11か月唇側誘導線挙上ポイント3歳4か月3歳4か月ポイントはスーパーボンドのような接着性レジンを用いる。赤斜線はスペーサー

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