インプラント症例ファイル2012
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インプラントは欠損補綴の選択肢の1つとなったが、長期的に成功させるためにはメインテナンスが必須である。 歯周病治療におけるメインテナンスをふまえた動的治療ゴールとして、 ・プロービングデプス≦4mm ・BOP(+)≦10% ・Ⅱ度またはⅢ度の根分岐部病変が存在しないなどが挙げられる。 動的な治療完了後に適切なメインテナンスを行った場合と行わなかった場合では、明らかに喪失する歯数は違ってくる。 インプラントのメインテナンスは、インプラントと天然歯が混在するケースが多いため、歯周治療におけるSPT(supportive periodontal therapy)を基準にメインテナンスを行っていくことが、現在考えられるベストな方法であると思われる。 SPTにおいて注目すべき指標を以下に列挙する。 ・プラークの付着 ・PPD(歯周ポケット) ・プロービング時の出血(BOP) ・骨レベル(X線写真) 天然歯がどういう理由で抜歯されてインプラントになったかを把握したうえで、メインテナンスを行うことがさらなる歯牙の喪失を防止することにつながると考えられる。メインテナンスの目的は、 ・炎症のコントロール ・力のコントロール ・リスクファクターの排除である。さらにプラークコントロールの状態や咬合の状態をチェックし、全身状態も確認する。問題が発見された場合にはそれに対応して治療を行う。筆者の場合、基本的には3ヵ月ごとのメインテナンスを行っており、状態によってメインテナンスの間隔を変えている。 インプラントにも歯周病同様にインプラント周囲粘膜炎、インプラント周囲炎といった細菌由来の炎症が起こる。インプラントの発症率としては、2005年に九州インプラント研究会が「インプラント治療後に起こる問題の27.1%がインプラント周囲炎である」、2008年にはZitmanら5)が「埋入したインプラントの12~43%にインプラント周囲炎が起こり、約50%にインプラント周囲粘膜炎が起こる」と報告している。 インプラント周囲炎の診断として留意する点を以下に記す。 ・プロービングは周囲組織にダメージを与えないよう に軽圧(0.25N)で行う ・プロービングデプスの経時的な増大は支持骨の喪失 と関連する ・BOP(プロービング時の出血)は周囲粘膜の炎症の 存在を示す ・プロービングデプス、BOP、排膿は定期的に評価 するべきである ・X線写真は周囲の骨レベルの評価に必要である インプラント周囲炎に関しては、治療に関するガイドラインとしてLangら6)が提唱するCIST(累積的防御療法)(図1)があるが、感染したインプラント表面の除染に関してはエビデンスをもった方法がなく、手探りの治療を行っているのが現状である。インプラント周囲炎はじめにメインテナンスインプラント周囲炎への対処法佐藤博俊(埼玉県勤務)シンポジウム 歯周病とインプラント26

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