インプラント症例ファイル2012
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近年、インプラント治療が欠損補綴方法のもっとも有効な手段として選択されていることに疑いの余地はない。しかしながら、すべてのインプラント治療の対象は予後不良と判断され、その後に抜歯されて生じた欠損部位であり、歯の保存に努めることの重要性は今後もなんら変化することはない。 「天然歯」の機能に勝る補綴方法はなく、歯の保存がやはり第一義であろう。発達する種々の再生療法は失われた歯周組織を回復するが、それ以上欠損を進行させないためにも支援的歯周病治療、いわゆるメインテナンス治療やSPT(supportive periodontal therapy)は、 安定した歯周組織をマネージメントしていくうえで特に重要であり、この期間は長期に及ぶ。 1978~2009 年の間で、メインテナンス治療のために日本大学歯学部付属歯科病院に1年以上通院している患者102 名(男性43 名、女性59 名)を対象とし、初診時のメインテナンス治療開始時、またはメインテナンス期間中の各時点における抜歯本数および抜歯理由などを調査した(表1)。 メインテナンス期間中の総抜歯本数は84本で、その原因は歯周炎の悪化、 歯の破折が過半数を占めた(表2)。 初診時から最終来院時までの総治療期間の平均は9.51 年(最短1.5年、最長32.58年)であった(表3)。10 年以上のメインテナンス歴をもつものは23 名(22.55%)であり、平均メインテナンス期間は6.69年(最短1.08 年、最長30.2年)、メインテナンス期間中の平均抜歯本数は0.82本(最小0本、最大7本)、平均喪失率は0.12 本/年でであった(表4)。なお、メインテナンス期間中に1本も抜歯しなかったものは63 名(61.76%)であった。 HirschfeldとWassermanの研究1)で、600名の歯周病メインテナンス治療の重要性歯の喪失率歯周病とインプラント治療抜歯の原因歯周治療における歯の喪失率に関する長期研究関 啓介(日本大学歯学部付属歯科病院 歯科インプラント科)表1 各時期における歯数と1人あたり平均残存歯数時期総歯数平均残存歯数初診時2,569本25.19(13~31)本メインテナンス移行時2,314本22.69(6~31)本最終来院時2,232本21.88(6~31)本表2 メインテナンス期間中の抜歯原因と本数原因本数歯周炎の悪化38本歯根破折22本慢性根尖性歯周炎14本智歯周囲炎、埋伏歯10本合計84本表3 平均治療期間動的治療期間メインテナンス期間最終来院時までの総期間2.86年6.69年9.51年シンポジウム 歯周病とインプラント22

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