インプラント症例ファイル2012
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では、個々の歯周病罹患歯についての抜歯基準はどう考えられてきたのだろうか? 日本歯周病学会は2008年のガイドラインに歯周治療の初期と後期に抜歯を行うための判断基準を示している(表2)3)。明らかに保存や機能回復が望めないものに対して患者にしっかり説明し、抜歯を行うべきとしている。また、2009年にAvilaら4)は、患者の状態をより具体的に6段階の項目に分け、チャート(図1)で解りやすくチェックできるような判断基準を作った。このチャートの根底には日本人歯牙の特異性は考慮されていないので、あくまで参考に留めるべ判断基準抜歯適応となるケース歯周治療初期における抜歯の判断基準①対症療法を行っても、過度の同様により痛くて咬めない結果、回避性咀嚼を行ってしまう場合②十分なデブライドメンドができない、あるいは斬間固定ができないほど進行した歯周炎③治療中頻繁に急性膿瘍が生じ、広範囲歯周組織の破壊の原因となる可能性がある場合④どのような治療計画を立案したとしても、利用価値が見い出せない場合暫間的に保存し、歯周治療後期に抜歯を行うための判断基準①臼歯部咬合高径を維持している場合 →暫間補綴に置き換えらた後に抜歯②臼歯部の咬合高径を維持し、かつ隣接領域にインプラントを埋入した後も機能している →インプラント上部構造が装着された後に抜歯③隣接領域の歯周外科を予定している場合長期に予後不良・>3■ or 2■+2■:抜歯・>2■+1■ or 1■+>3■ or 4■:抜歯を考慮・1■+<2■ or 3■:保存を認めるが、経過によっては抜歯・2■:妥協的に保存・All■ or 1■:保存慎重に進める予後良好1st level最初の評価2nd level歯周疾患の重症度3rd level根分岐部病変4th level病因因子5th level修復因子6th level他の因子患者の要望保存希望抜歯希望PPD<5mm5~7mm>7mm歯石は存在するか?YesNo不良補綴物や破折はあるか?RestorableNon-restorable喫煙非喫煙喫煙治療への期待短期間長期間分類ClassⅠClassⅡClassⅢ隣接面の骨レベルAboveAT動揺度0 or 123歯冠歯根比AboveAT歯周外科が骨量を減少させるか?YesNo全身状態問題ない治療下審美非条件必要アブセスNoYes根形態NoYes歯周再治療No再発難治性進行したカリエスNoYesBP製剤の使用なしOralファイナンス余裕あり制限あり歯周再治療<30%30~65%>65%根近接NoYesポストコアーが必要か?NoYes根分割、治療費の問題YesNo術者の技量Minimal不平不満相応に強い骨欠損状態Deep, narrow根管治療TreatmentfailedBelowSuperfi cial,wideTreatment successfulor not necessaryExperiencedBelow歯周病罹患歯の抜歯基準図1-b図1-a表2 抜歯の判断基準(日本歯周病学会 2008)3)図1-a、b Extraction versus conservation decision chart4)。1st:最初の評価、2nd:歯周疾患の重症度、3rd:根分岐部病変、4th:病院因子、5th:修復因子、6th:他の因子の6段階レベルに分け、さらにそれぞれ4~5項目について評価を行う、項目ごとに赤・黄・緑の判定をし、赤・黄が多い場合、抜歯を推奨。歯周病罹患歯の抜歯基準を考える:抜歯か?保存か?17

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