インプラント症例ファイル2012
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従来、歯科診療における作業は労働集約型ビジネスの典型とされており、歯科医師や歯科技工士、歯科衛生士による労働がビジネスの根幹をなしていた。しかし、コンピュータ技術の発達は歯科診療に広く影響を及ぼし、診療の態様は変わりつつある。それは、今までの歯科診療をアナログデンティストリーと呼ぶならば、デジタルデンティストリーと称してよいものである。 デジタルデンティストリーによって歯科診療で使用されるものの表現、保存、伝送の方式は軒並み替わりつつある。表現としてのX線フィルムや石膏模型はディスプレイ上の画像へ、保存としての棚や収納庫はハードディスクやCD、DVDなどのストレージへ、伝送としての郵便や宅急便はインターネットへと変わってきている。さらに対象を具現するためのロストワックス法はCAD/CAM法に変わることにより、技工技術に変革がもたらされている(表1)。 しかし、CAD/CAMのインパクトは技工物の作製法に留まらず、使用材料や診断法にも及んでおり、さらには事業形態にも転回をもたらす可能性がある。以下では、CAD/CAMのデジタルデンティストリー内での位置づけをインプラント診療と絡めて吟味する。 CAD/CAMはインプラント診療において、診断、インプラント埋入、上部構造の作製など重要部分のほぼすべてと関連している。 CT撮影から得られたデータはシミュレーションソフトを用いて処理され、三次元的な視覚化が行われる(図1)。さらにそのデータからCAD/CAMの一法である積層造型法(ラピッドプロトタイピング)を応用して顎骨模型を作製することが可能であり(図2)、埋入位置や埋入本数に関するより正確かつ実態的な診断に供することができる。またインプラント埋入時に、やはり積層造型法で作製した埋入用テンプレート(図3)を用いて、シミュレーションソフトによる設計と違わぬ埋入の実現が可能となる(図4)。さらに、上部構造作製にあたっては、コンピュータ上で行ったバーチャルワックスアップのデザデジタルデンティストリーの一環としてのCAD/CAM塩田 真(東京医科歯科大学インプラント・口腔再生医学)歯科診療における情報の様相AnalogDigital改善点表現法X線フィルム石膏模型コンピュータディスプレイバーチャル3D即時性採得法印象材光学印象快適性保管法保管棚ストレージ大容量伝達法宅配便インターネットスピードアップ等質性リアルワックスアップ鋳造デジタルワックスアップミリング自動化クオリティコントロール均質性台帳管理ソフトトレーサビリティーはじめにCAD/CAMによる情報革命表1 歯科におけるアナログからデジタルへの移行特別講演10

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