支台歯形成のかんどころ
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2CHAPTER 36 実際に観察してみるとわかるが、片側で2°というテーパーは模型にした場合には判別できても、狭い口腔内ではテーパーが付いているのかどうか、慣れないと肉眼ではなかなか見分けにくい角度である(図2-25)。またテーパー2°ではセメント合着を行った時にセメントラインが厚くなりやすく、5°になるとこの厚さが急激に減ずるという実験データから、軸面テーパーは片側5~10°に形成すべきであるという意見もある。これらのことを総合的に勘案すると、 通常の症例では軸面テーパーをできるだけ片側で5°に近づけるように努力しつつ、最低でも10°以下となるように目標を定めて形成するのが現実的であろう。 軸面形成を始める時にはまず頬舌面、それも直視しやすい頬側面から形成する。使用するバーは咬合面の削除で使用したと同じシャンファー形成用バーである。 頬舌面の形成で初心者が犯しやすい過ちは、いきなり形成辺縁となる歯頸部にバーの先端を当てて削ろうとすることである(図2-26)。 当然のことながら頬舌面の最大豊隆部より下はアンダーカットになっているので、いきなり歯頸部付近にバーの先端を当てて形成しようとすると、図2-27のように形成した軸面が逆テーパーとならざるを得ない。それを形成途中で修正しようとするとバーの角度を何度も変えることになってしまう。その結果、軸面がテーパーの一定なきれいな面にならず、中央部が膨らんだ曲面になったり、部位によってアンダーカットが生じたりしやすい(図2-28)。したがっていきなり形成辺縁である歯頸部付近の歯質を削除するのは誤りである。 ではどうするかというと、まず頬側面に対しどのくらいバーを傾ければ適切なテーパーになるか、支台歯形態を頭の中に思い描いて角度を定めたら、そのままの角度を保ったままでバーを支台歯に近づけていく。 すると図2-29のように最初にバーの側面が支台歯の最大豊隆部に接触するはずであるから、角度を保ったままフェザータッチでバーを近遠心的に動かし、接触している歯質から削除していく。この操作をバーの先端が歯頸部の歯面に触れるようになるまで続けると、一定のテーパーできれいに頬側の軸面が形成される(図2-30)。図2-25 片側2°のテーパー。模型では確認できても狭い口腔内で確認するのは難しい。2�軸面形成は直視しやすい頬側面から始めよ!

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