知りたい・聞きたい歯科矯正
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112各種機能に関するQ&APART 3矯正歯科治療と全身(姿勢)の関連はありますか?A当然あるでしょう.しかし,矯正歯科治療がすべてではありません矯正Q4uestion中島:全身と各部位が関連のない生体は,まず100%ないし.関連は当然あります.ただし,それがすべて咬合から生じていて,それを矯正すれば,全身的な問題がすべて解決するようなことを言う人もいるようだけど,私はそれは幻想かなと思っている.「全身を考慮して,歯科治療を行う」というのを謳い文句にして,その原因をすべて咬合に求めているというやり方はどうなんだろう.大げさに言えば歯科のルネッサンスが必要だね(図4-1). 質問に姿勢と書いてあるでしょ? 姿勢が悪くなっていることの原因として,どういう大きな原因が考えられるかをまず考えることが大切だと思う.もしかしたら形態異常があるのかもしれないし,機能的な問題があるのかもしれない. あとは生活習慣の癖などをチェックした上で,じゃあ,矯正歯科治療がどこまでそれに関与できるかという範囲は,あまり過大評価をしないほうがいいかなと思います.「生活習慣病を治療して咬合を治す」という考え方もあるでしょう.あれは「100症例治しました」と言って,「101症例目はどうしますか?」と言ったら,「いや,この人はこの人でまた対応します」,「102症例目はどうされますか?」,「この人はまた対応します」と.だから,これをくり返しても103症例目に適応できるような何かルーティンは出てこないんじゃないのかな.槇:姿勢や全身的な状況と咬合との関連性は,まだ科学的に明確にされておりません.診断方法もそうですが,両者の量的な関係やそのメカニズムを解くのが難しい.だから,個人的には非常にあり得るとは思うのですが,それが万人に一様の方法で効果をもたらすものとは言えないとも思います.中島:ある意味では,一つの“Tweedの三角派”みたいなのがあるでしょ.それと同じ“態癖派?”ですよね.E=MC2のように一つの公式で世界を表すことができればいいけど,臨床っていうのはそうはいかない.ひとつのやり方ですべてをねじ伏せようとすることが,そもそも間違っていると思うよ.どうして,そういう志向にはまりこんじゃうのかな,悲しくなっちゃうね.私はたまたまPNFを使用して姿勢を改善していますので,その2例をご紹介しますが,これも一つの方法ですべてじゃありません(図4-4~5).槇:「それを明らかにするのが大学の人の役目でしょ」と言われるのはわかっております(笑).「でも,いい装置がないので,どうしようもないです」と答えざるを得ない.──話は少し異なりますが,矯正歯科治療によって,頭痛や肩こりはよくなるでしょうか?中島:咬合が関与する頭痛とか肩こりであるならば,当然,改善する余地はあると思うけど. ただし,頭痛に関してみれば,頭痛の原因はたくさん考えられるので,一概には言えないし.肩こりとの関係に関しても,頭痛ほど危険ではありませんが,いくつかの要因があります.危険なのは,頭痛や肩こりということに関して,咬み合わせを治せばよくなりますよ,と安易に言い切ってしまうことですね.頭痛にも片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛とかいろいろな頭痛があり,もしかしたら脳腫瘍などの重大な疾患が考えられる場合もあるので,注意をする必要があると思うよ. 槇:原則的にはそうだと思います.

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