禁煙 あなたのお口と全身の健康
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50の傾向にある歯周病を持つ喫煙者と,それより軽度な傾向にある非喫煙者間とでの違いがあまり見られないこともわかっています(図表3-7)。 このことは,喫煙は何らかの仕組みで,本来病気の進行に伴って強くなるはずの炎症の本当の姿を,厚いベールで隠してしまっている疑いがあるのです。この理由については55~56ページで触れます。 つまり,喫煙者の歯周病が悪化しやすいのは,プラークのたまる量が4.なぜ喫煙で歯周病が悪くなる? 話の理解を深めるために,まず歯周病の発症と,その進行の仕組みの話から始めましょう。★歯周病の成り立ち 以前は歯槽膿漏と呼ばれていた歯周病とは,歯茎(歯肉)が腫れて出血して,膿も出て,やがて歯がぐらぐらしてきて,自然に抜けてしまう病気として知られています(図表3-9)。 この原因は,歯を磨かないでいると,歯にたまってくるプラーク(歯しこう垢)です(図表3-10)。プラークは,白または黄色っぽくて柔らかい状態で歯に付着しており,むし歯の原因としても知られています。 その中には,歯周病やむし歯の原因である細菌などの微生物が巣を作り,時間が経つにつれて微生物たちの数も増え,さらに顔ぶれが,私たちの歯の周りの歯茎(歯肉)や骨を攻撃する,より凶悪なタイプに変わっていくのです。よって,このプラークをバイオフィルムと呼ぶことがあります。 このプラークは,歯と歯肉との境目の歯しにくこう肉溝と呼ばれる,0.5㎜から2.0㎜くらいの深さの溝の中が大好きです(図表3-11)。この歯肉溝の中にプラークがたまると,病原菌の影響で歯肉が炎症を起こして腫れてきます。 そして,この状態が長く続くと,時間とともにどんどん溝が深くなり,歯肉ポケット,多いからではなく,別の原因によることが 図表3-8 喫煙者の歯周病の特徴・歯面はタールの色素沈着(黒褐色)でざらざら・炎症は比較的軽度に見える(見せかけ)・強度の歯肉(歯茎)退縮とロール状歯肉・歯肉(歯茎)のメラニン色素沈着が激しいことがある・深い歯周ポケット(歯と歯茎の間の亀裂)の形成・高度の歯槽骨(歯を取り囲む骨)の吸収(骨がなくなる)・治療への反応が悪い(治りが悪い)・メインテナンス時に歯を失いやすいつまり,喫煙者は歯周病がより重度となり治療しにくく,治療後の管理もうまくいかない。考えられています。

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