禁煙 あなたのお口と全身の健康
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48 喫煙と関係があるとされる口腔内疾患には,歯肉がん,舌がん,頬粘膜がん,そして歯周病があります。 まずその中で,むし歯とならび歯を失う原因のひとつである,歯周病(歯し槽そう膿のう漏ろう)と喫煙との関連について考えてみます。 欧米では、30年以上前から多くの研究者が,喫煙は歯肉がんや歯周病の発症や進み具合と強い関係をもつ危険因子のひとつであることを報告してきました。そのような背景を受けて,喫煙習慣を口腔衛生の重要な問題として取り上げ,現在では歯科医院で治療を受ける患者さんには,禁煙をすすめる所が増えています。このことは,海外よりも喫煙人口が多い傾向にある日本でより大きな課題であるといえます。 喫煙は,私たちの口の中にいったい何をもたらすのでしょうか?★喫煙で口の中に生じる症状 通常,吸い込まれたタバコの煙は,歯や口の中の粘膜,そして歯茎に触れながら,気管へ,肺へと,吸い込まれていきます。よって,口の中のさまざまな組織は,できたてのタバコの煙が初めて触れる部分である,といってもよいでしょう。それゆえ,この煙は周囲の組織にさまざまな影響を及ぼす,と考えられます。3.喫煙と歯周病とのつながり 次に,歯周病との関連について解説します(図表3-4)。前述のように,歯にタールが沈着すると,表面がざらざらして歯にプラークがつきやすくなります。とくに,歯と歯の間にタールがこびりついてしまうと,歯ブラシではとれなくなってしまいます。この歯についたプラークは歯石になります。 また,喫煙者では,非喫煙者と比較すると,歯周病にかかる危険性が高まるとともに,すでに歯周病にかかってしまっている人は,その症状がより進行し,重篤になりやすいのです(図表3-5)。場合によっては,気づいた時には手遅れで歯が抜け落ちることもあります(図表3-6)。 これらの喫煙者,非喫煙者で,歯周病の病気の状態に差があるという結論は,1980年代に行われた多くの調査研究の結果にもとづいているのです。図表3-7に,その 図表3-4 歯周病と喫煙との関係歯に汚れをつけやすくする歯周病にかかる確率を高める歯周病をより進行させる歯周病の本当の病態を隠す治療した場所の治り方を遅らせる喫煙は──

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