歯科におけるしびれと痛みの臨床
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120 はじめに 感覚神経の損傷が明らかになった場合は,何らかの治療が必要になる.治療法の選択にあたっては,治療を行うタイミング,治療の対象となる神経の傷害状況,治療を行う側が提供できる医療内容,患者側の基礎疾患等治療に影響する要因などがかかわってくる.受傷後の各時期における対応を図1に示す.1症状の自然寛解の観察期間は受傷後1週まで この時期は,神経の傷害度の重傷度の判定と予後判定ならびに積極的治療法の導入を決定する時期にあたる.治療法の決定にあたっては,それぞれの治療法を患者に説明したうえで,患者の同意を得なければならない.その際,必然的に医療提供側からの助言が必要となる.重度障害症例においては,早期の積極的な治療が勧められるべきであるし,自然治癒が見込めるような軽度障害例では,内服治療だけでよい.術後組織の腫張等によって神経が圧迫を受けて感覚障害が生じている程度(神経線維の傷害度は多くの線維がneurapraxiaの状態)であれば,感覚障害の程度も軽く,腫張の寛解とともに感覚も戻るであろうし,それは少なくとも受傷直後にまったく触っている感覚がないという状態ではない.専門医紹介のための自覚症状をもとにした予後判定は,1週以内で行うべきである.早期の治療効果を上げるため図1 神経傷害後の経過時間に応じた治療法の選択.神経傷害後の治療の時期は,受傷直後,ワーラー変性期,神経再生期と分けることができる.受傷直後は,神経傷害の事実の確認のための時期であり,1週以内に紹介するか否かを判断すべきである.ワーラー変性期には,積極的治療を行い,神経再生期には,対症的治療を行う.SGB:星状神経節ブロック積極的保存療法ステロイド+SGB専門医紹介まで対症的保存療法抗うつ薬抗痙攣薬+局所薬剤塗布(SGB)手術(神経吻合・神経移植・再生誘導)ビタミンB12,光線療法,漢方,はり・灸1週3~4週1~3年には,1日も早い積極的な治療が必要であり,そのためには専門医への紹介を躊躇してはならない.傷害後2週以前の積極治療を開始するためには,受傷後の自覚症状寛解の観察に許される期間は1週以内である. この時期には,患者に安易に「麻痺は数か月で治ります」などと説明を行わないようにしなければならない.自分が施術して神経傷害を起こしてしまった場合,その場を取り繕うためにこのような説明をしてしまいがちであるが,治癒しない場合,かえってその発言の責任を問われることになる.Chapter 4感覚神経損傷後の治療法の選択および予後説明今村佳樹 一戸達也 福田謙一 高崎義人 半田俊之 笠原正貴 渋谷 鉱1治療法の選択および予後説明 (今村佳樹)

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