歯科におけるしびれと痛みの臨床
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045Chapter 2 症例検討2 根管治療後 神経症状の評価とその治療経過 (図3) SWテストなどの感覚の量的検査の数値は正常で,むしろ過敏状態であった.自覚症状のタイプは,ピリピリ感など明らかに神経障害後の症状であった.強い痛み症状があったため,神経をできるだけ回復させること以前に,まずは痛みを和らげるためという目的があった.そ まとめ 本症例は,抜髄処置の行為にとくに問題はなかったと思われるが,と下顎管が連続していたことによって,容易に下歯槽神経が損傷されたと思われる.根管の尖通 初診までの問題点 担当歯科医師は,と下顎管の位置関係を事前に十分把握していなかったようだ.事前に十分に把握したうえで,慎重に抜髄処置を施すべきであったと思われる.また,抜髄処置翌日の患者の訴えに対して,よくみられる抜髄後痛と判断し対応したようだが,口唇やオトガイ部に症状を訴えていたので,神経障害性の症状であることを認識すべきであった.そうであったならば,根管充填によって,さらに痛みを増悪させることはなかったのではないかと思われる.のため,当初からアミトリプチリンの処方を開始した.数回の星状神経節ブロックで,著しい痛みは軽減し,ピリピリ感も60日後には軽減傾向となった.しかしながら430日を経ても,dysesthesiaと「かきむしりたくなる違和感,不快な感じ」は残存していた.これ以上の改善は期待できないと判断し,430日後,治療は中止となった.後,ホルマリンクレゾールの根管貼薬時に,その化学的刺激に起因したと思われる神経障害性疼痛が発現し,さらに根管充填剤の下顎管内への漏洩がそれを悪化させたものと思われる.図3 本症例における神経症状の評価と治療経過.自覚症状SWテスト二点識別冷感覚温感覚dysesthesiaallodyniaparesthesiaピリピリ感じわーっとした痛み1.6514過敏過敏著しくありありなし発症近赤外線照射44回施行208日までプレドニゾロン30日まで星状神経節ブロック42回施行192日までビタミンB1260日までアミトリプチリン430日まで残存残存残存残存軽減消失軽減治療経過(薬剤投与)なしなし終了430日200日初診10日60日30日根充剤除去

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