別冊 CAD/CAM YEAR BOOK 2011
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15TECHNICAL REVIEW歯科用CAD/CAMをめぐる世界の潮流山下恒彦(DenTech International Inc.)はじめに 筆者がはじめて歯科用CAD/CAM治療と遭遇したのは、1990年代初頭のことである。当時、スイスのチューリッヒ大学で「CEREC System」(Siemens、現在ではSirona Dental Systems)の開発者であるDr. Mörmannらが同システムを駆使し、今でいう「One Day Treatment」を行うクリニックを開設して世界の注目を浴びていることを知った筆者は、このクリニックがどのような体制でCAD/CAMを歯科治療に組み入れているのかをこの目で確かめたいと思った。そうした折、偶然にもスイスで国際歯科補綴学会が開催され、中村隆志先生(大阪大学歯学部歯科補綴学第一講座)のご配慮で筆者はそこに訪問する機会を得た。 そこでは、各デンタルチェアに1台ずつのCEREC Systemが備え付けられ、患者は口腔内スキャン後、修復物完成まで約3、4時間ほど自由に過ごし、その後修復物装着という段取りで治療にあたっていた。その時に筆者がみた補綴物はセラミックブロックを削り出してステインを施したセラミックインレーであったが、お世辞にも褒められたクオリティーの補綴物ではなく、その時、筆者のCAD/CAM熱も急激に冷めていったのを記憶している。 その後USC(University of Southern California、南カリフォルニア大学)で、フランスから同学に移ったDr.Duretが開発を手がけていた「SOPHA System」を用いた補綴物などを拝見する機会も得たが、やはり臨床的に満足のいくものではなく、歯科におけるCAD/CAM テクノロジーとはこんなものなのだと、当時は半ば諦めていた。 そして、3年ほど経過した1996年のある日のこと。NobelPharma(現:Nobel Biocare)の方が1台のスキャナーを弊社に持ち込み、「ニューテクノロジーのCAD/CAMシステムを使って、1年間クリニカルリサーチをすることになったのでぜひ協力してほしい」と要請された。そのシステムから製作されたセラミックコーピングは今まで筆者が目にしてきたCAD/CAMによる補綴物とは比較にならないほど精度の高いものであり、これが筆者と「PROCERA system」(Nobel Biocare)との最初の出会いであった。本年で、ちょうど15年の月日が経過したことになる。そしてこの出会いが、筆者の歯科用CAD/CAMとのお付き合いのはじまりとなった。 現在では歯科治療全般にCAD/CAMテクノロジーが随所に加味され、とくに審美歯科・インプラント治療の分野における応用範囲には目を見張るものがある。そこで本稿ではこの2つの分野にフォーカスをあて、CAD/CAM All Ceramic Framework、Intra-Oral Scanner、CAD/CAM Implant Restorationの3項目について世界の歯科CAD/CAM治療の潮流を解説していきたい。

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