別冊 CAD/CAM YEAR BOOK 2011
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11歯科用CAD/CAMのわが国における現状と将来展望クステーションが必要であったが、現在では小型のパーソナルコンピュータで、当時のワークステーション以上の性能が得られるようになった。歯冠形状の自動設計とグラフィック処理、さらにはきめ細かい形状の修正が可能になっている。小型の歯科技工専用のCAD/CAM装置が開発され、チタンやファインセラミックスの利用が可能になった9。 さらに、ネットワーク技術の普及により、CAD/CAMがネットワークと連結し、歯科技工専用の加工センターが登場した。これにより、従来の歯科技工設備では利用が困難であったアルミナやジルコニアなどの高強度セラミックスの高密度焼結体の利用が可能になった10‐12。オールセラミックスのコーピング製作のために、石膏模型の計測データを加工センターにネットワークで転送して、CAD/CAMを利用してアルミナやジルコニアのコーピングを製作する。完成したコーピングは歯科技工所に送られ、前装用陶材を従来法で築盛・焼成して修復物を完成する。現在はこの方式により、ジルコニアがフレームとして世界中で導入されている(図3)。 また近年、光学技術の進歩によりカメラの性能が向上し、光学印象が実用化の時代になりつつある13(図4)。Dr. Duretが提唱した全工程をCAD/CAM化する方法が夢ではなくなった。2.歯科用CAD/CAMが現在の歯科界・歯科技工界にもたらしたもの 歯科用CAD/CAMを適用する利点は、新素材の適用、装置の高機能化、製作工程の省力化、経済性、品質管理などである。 材料と技術には密接な関係があり、CAD/CAMを利用すればチタンや高強度セラミックスなどといった従来の歯科技工技術では適用が難しかった材料を加工センターで一般産業界の大型設備を利用して加工できる。歯冠修復物は支台歯への適合が要求されるため、加工や後処理にともなう寸法変化の補償にCAD/CAMの手法は有用である。 とくに、ガラス(陶材)クラウンは、従来の粉末築盛・焼成による形態再現と比較して、CAD/CAM装置でブロックから削りだすほうが非常に効率が良い。ブロックは粉末築盛・焼成体に比べると内部支台歯最終修復物・口腔内装着印象採得作業用模型ワックスアップ鋳造(メタルワーク)陶材築盛(ポーセレンワーク)口腔内カメラ(光学印象)CADバーチャルモデルバーチャルワックスアップCAM数値制御加工切削支台歯印象採得作業用模型ワックスアップ鋳造(メタルワーク)計測用模型計測CAD/CAM最終修復物・口腔内装着従来の技工作業図1 従来の歯冠修復物の製作法と、Dr. Duretの提唱した方法(第一世代の歯科用CAD/CAM)。図2 技工工程の一部に応用されるCAD/CAM(第二世代の歯科用CAD/CAM)。

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