別冊 CAD/CAM YEAR BOOK 2011
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10TECHNICAL REVIEW歯科用CAD/CAMのわが国における現状と将来展望宮崎 隆*1/堀田康弘*2(*1,*2昭和大学歯学部歯科理工学教室)はじめに 歯科医療では、患者の個別の症例に応じて歯冠修復物や補綴装置を、高度に専門化した歯科技工技術によりオーダーメイドで提供してきた。一方、近年、世界中で材料の安全性や審美性に対する患者の要求が一段と高まり、チタンやファインセラミックスなどの新素材やインプラント義歯が導入されてきたが、従来の歯科技工技術だけでは対応が難しく、新しい成形加工方法が模索されてきた。そのひとつが、一般産業界で普及が進められたコンピュータを利用した製品の設計と加工のシステム、すなわちCAD/CAM(Computer Aided Design and Computer Aided Manufacturing)である。 歯冠修復物製作にCAD/CAMの手法を応用する試みは、1970年代にフランスのDuretにより提案され、1980年代を通じてわが国を含めて、世界中で先駆的な研究開発が繰り広げられ、ハードウェア(計測装置・コンピュータ・加工装置)とソフトウェア(計測精度の向上、歯冠形状の再現と設計)の両面から開発が進められた1‐7。とりわけ2000年に入り、インプラントや審美歯科領域にCAD/CAMの手法が世界中で急速に応用され、歯科技工のあり方が変革しつつある。この波は、数年前から日本にも押し寄せて、現在では欧米の主要なCAD/CAMシステムや、加工センターが日本にも導入され、インプラント上部構造や審美修復に活用されている。1.歯科用CAD/CAMの変遷 Dr. Duretは、支台歯形成後、印象採得に引き続く間接法による従来の金属修復物製作の流れをすべてコンピュータ支援で行うことを提唱した1,3(図1)。しかし、口腔内の直接計測の精度が十分でないことや、当時のコンピュータの能力やソフトウェア・ハードウェアの限界があり、臨床での普及には至らなかった。一方、CEREC systemの開発者であるDr. Mörmannは、口腔内のインレー窩洞を小型のカメラで直接撮影し、モニター上で修復物を比較的簡単な方法で設計し、直ちにセラミックブロックから削り出して製作する方法を開発した4。咬合面形状の再現は術者に委ねられたが、即日修復を可能にした。このシステムは世界中に紹介され、CAD/CAMという用語が歯科界に普及した8。 他方、口腔内のクラウン・ブリッジの支台歯を直接カメラなどで計測することは、隣在歯・歯肉・唾液の存在や、計測装置の挿入方向などによって計測環境が制限され困難だったため、石膏模型をCAD/CAMの出発点とし、これを計測することによりデータを収集し、その後のクラウン・ブリッジの設計・加工にCAD/CAMを利用するシステムが主流になった。すなわち、CAD/CAMが技工工程の一部に利用されている(図2)。 模型表面を計測してデータを入力する装置をデジタイザーやスキャナーとよび、さまざまな方法が開発された。CADについては、1980年代は大型のワー

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