天然歯を活かしたインプラント治療
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はじめに インターネットやデジタル技術の開発により、歯科界においてもX線写真や口腔内写真はフイルムからデジタルへ、プレゼンテーションはスライドからパワーポイントやキーノートへと置き換わり進化を遂げている。そしてインプラント治療の分野では、CTのデジタルデータをもとに正確な埋入ポジションを決定し、それに基づき作製したサージカルガイドを用いたガイデッドサージェリーによって、誰もが安心・安全なインプラント手術を行うことが可能となった。 しかしながら、近年の口腔内スキャナやCAD/CAMの登場・発展によって、デジタルへの過度な期待およびデジタルへの過度な拒否感が生まれ、それが歯科界の進化に問題を起こしているように感じられる。本来デジタルとアナログは反発するものではなく、融合しながら互いを高めるものであり、デジタル技術の応用には、それぞれの長所を生かしながら適材適所で臨床に生かしていくべきだと筆者は考える。 本稿では、デジタルスマイルデザインとアナログの デジタルスマイルデザイン  デジタルスマイルデザイン(以下、DSD)1、2)は、Dr. Cristian Coachman(図1)が開発したシステムで、患者の顔貌主導型で治療のシミュレーションなどを行うことができるツールである。筆者も参加したハンズオンコース(2017年、JIADS主宰)にて「DSDは複雑な治療計画を立てるうえで、治療のゴールを患者と共有することができる有効なツールとなるだろう」とDr. Coachmanが述べたとおり、患者の治療に対するモチベーション継続を期待できる点が大きな特徴である。筆者もこのコースでこの考えに同感し、本システムを導入するに至った。 DSDの特徴の1つ目は、患者の顔貌写真に加えて笑顔の動画を撮影するという点(図2-a)。2つ目は、撮影した情報から新しい患者の笑顔をコンピュータ上でデザインし、患者に見せられるという点(図2-b)。3つ目は、デザインした笑顔から作製したモックアップを実際に患者の口腔内に装着して見せられるという点である(図2-c)。このようにして患者と治療のゴールを共有し、治療へのモチベーションを上げることができるのである。特に、動画撮影によって、静止画の撮影で起こりがちな作り笑いではない、リアルな笑顔を再現することができる。そして、それに基づいたモックアップを治療前に装図1 Dr. Coachmanと筆者。略歴2008年 朝日大学卒業2014年 医療法人おくだ歯科医院 歯周病インプラントセンター勤務2020年 医療法人おくだ歯科医院 歯周病インプラントセンター継承    日本臨床歯周病学会認定医、Jiads study club OSAKA、ENの会ジェネラルメンバー、    SAFE、OJ正会員ワックスアップを用いて診断を行い、補綴修復では光学印象とシリコーン印象を融合させたトップダウンによる設計を行い、デジタルとアナログの有利な部分を組み合わせて治療を行った症例を供覧する。88奥田裕太Yuta Okuda大阪府開業Fusing digital and analog approaches : Top-down treatment utilizing Digital Smile Design会員発表

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