天然歯を活かしたインプラント治療
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歯歯 はじめに インプラントが長期にわたり機能することは既知の事実である。インプラントは咬合支持を助け、審美性の確保に役立つものと考えられている。その一方で、インプラント周囲疾患などの不具合も少なからず発生し1~4)、また顎顔面の成長によりインプラントと天然歯の位置関係のズレが起こることがわかっているが3、5~8)、その対策は十分とはいえない。このようななか、インプラントと天然歯がそれぞれ協働して咬合機能を営みながらも互いがマイナスの影響を与えず存在することは、超高齢社会において重要となっている。 本稿では、インプラントと天然歯の位置関係のズレ、すなわち乖離の問題を除き、歯周炎やインプラント周囲炎の治療の立場からインプラントと天然歯の共存と共生について考えてみたい。略歴1985年 九州大学歯学部卒業1987年 九州大学第1補綴学教室文部教官助手1989年 西原デンタルクリニック勤務1992年 福岡市福津市(旧宗像郡)にて開業2007年 九州大学歯学部臨床教授    日本臨床歯周病学会、日本歯周病学会指導医・専門医、日本顎咬合学会指導医、近未来オステオインプラント学会指導医、日本審美歯科協会、日本口腔インプラント学会、日本補綴歯科学会、米国歯周病学会(AAP)、米国インプラント学会(AO)、OJ相談役図1 共存と共生。2つ以上のものが同時に生存・存在することインプラント歯周炎周囲炎生存率共存オーバーロード異種の生物が相互に利益を受けながら生活することインプラント強固な咬合支持による負担軽減側方ガイド、歯根膜感覚コンタクトロス、イントルージョン脱落による負担過剰感染(炎症)力学的要因形態的要因(補綴的要因)歯列の調和インプラント 2つ以上のものが生存、存在することは“共存”、異種の生物が相互に利益を受けながら生活することは“共生”と表現される(図1)。一口腔単位で歯列の維持を行う場合においては、インプラントと天然歯がそれぞれ長期にわたり生存すること(=共存)、そしてインプラントと歯を含む歯列の位置関係や顎位が著しく変化しないこと(=共生)が求められる。また、特にインプラントと天然歯が隣接する場合においては、咬合支持や顎位の点からそれぞれが影響を及ぼし合うことが容易に想像される。共生80水上哲也Tetsuya Mizukami福岡県開業歯周病患者におけるインプラントと天然歯の共存インプラントと天然歯の共存 インプラントと天然歯が混在する歯列が長期に安定するためには、インプラントと天然歯がそれぞれ安定して維持されることが必要である。抜歯の原因の第1位であインプラントと天然歯の共存と共生シンポジウム3

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