天然歯を活かしたインプラント治療
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はじめに 日常臨床において、矯正治療なくしては改善できない不正咬合1)をもち、さらに歯の位置異常や欠損をともなう機能と審美障害を有する症例を散見する。とくに咬合崩壊のトリガーをすでに引いている症例に対する包括的治療計画を立案実行するには、矯正治療を自身で手掛けない筆者を含めた歯周病、補綴を専門にする臨床医は、その術を矯正医を含めたチームをもってアプローチしなければならない。すなわち、多分野にわたる知識と手技をもった専門医の連携によるInterdisciplinary Approachの実践が求められ、複雑な要因が重なり合って生じた難度の高い症例に対する唯一の解決手段といえる。 Interdisciplinary Approachの一方法 筆者のチームの考えるInterdisciplinary Approach略歴1996年 神奈川歯科大学卒業2002年 東京都千代田区 健造デンタルクリニック開院2011年 東京都目黒区 移転開業    OJ 理事、5-D Japan ファンダメンタル(ペリオ・インプラント)コース講師、    5-D Japan アドバンスコース インストラクター、    EAED(ヨーロッパ審美歯科学会)アフィリエイトメンバー図1 筆者のチームの考えるInterdisciplinary Approach。48Periodontal TherapyOcclusal ReconstructionEsthetic and FunctionOrthodontic TherapyOrthognatic SurgeryLimited Orthodontic TreatmentComprehensive Orthodontic Treatmentand4Phases of the Interdisciplinary ApproachImplant TherapywithProsthetic Therapyには歯周治療、インプラント治療、補綴治療、そして矯正治療の4つのフェイズがあり(図1)、各分野の治療介入のタイミングやゴールなどの治療計画をかかわる者すべてで立案し、共有する。 矯正治療を希望する多くの患者に顎位の不正や歯の位置異常が認められる2、3)。矯正治療を応用することによってそれらの改善を行うことにより、機能性や審美性を向上させることが可能となるだけでなく、歯周病が存在する症例では、歯周疾患の治療手順を容易にし、その結果の予知性向上にも寄与するであろう4)。また欠損が存在する症例では、その部位へのインプラント埋入本数の削減ばかりか、埋入が不要となるスペースクローズが可能となる場合も多い。 われわれが立案する理想的な治療計画に対して、当然ながらすべての患者がそれを望むわけでも受け入れるわけでもなく、限局的な対応に留めなければならない状況に頻繁に遭遇する。そうしたなかでも患者の年齢や要望を加味しつつ、上述した4つのフェイズを工夫し活用することで患者にとって有益な結果を導くことが可能となる。鈴木健造Kenzo Suzuki東京都開業矯正治療の応用によって変わるインプラント治療計画とその結果矯正治療を積極的に臨床応用する意義限局的矯正治療(LOT:Limited Orthodontic Treatment)を応用した臨床例シンポジウム2

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