どう診る? どう育てる? 子どもたちの歯列と口腔機能
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118ChapterChapter 私たちは,18歳以下を対象とした小児歯科専門のクリニックで,小学校入学前後の年齢層を中心に多くの子どもたちを日々診療しています.子どもたちの歯を守りながら,歯列と口腔機能の正常な発育を促し,健全な口腔を育成していくことを目指して日々診療を行っていると,歯ならびに問題がでる子どもたちには,必ずといっていいほど口の機能異常がともなっていることに気づきます. たとえば,異常嚥下癖のような間違った舌の動きが長期的に続くと,前歯の歯ならびに開咬,上顎前突,下顎前突などの症状として現れます.歯ならびの善し悪しを決めるのは遺伝的な要素だけでなく,口の機能の問題が深くかかわっているのです.3~5歳ごろに身につけるべき口の機能が未熟のままであれ1)口腔機能と歯列成長の関係とは ここで改めて,正しい口腔機能と歯列成長について確認しておきましょう.まず,安静時には口唇はば,その後の歯列や顎骨成長に問題をきたします1.口の機能や歯列に問題を抱えたまま成長するということは,心身の発育にも影響しますし,将来的に歯を失うリスクが高い口腔環境であることを意味します.子どもたちの将来にわたる健康のためにも,健全な口腔環境に導くことは,歯科の大切な役目であると考えています. しかしながら,臨床の現場においては,口腔機能の発達支援や歯列不正の予防的介入を「どのように行えばよいのか?」「アプローチの方法やタイミングがわからない」といった声を耳にします.本章では,現代の子どもたちに増えている口の問題と,臨床の現場でその問題に気づくためのポイントについて解説していきます.閉じられ,呼吸は鼻で行われます.そのときに舌尖は口蓋のスポットに位置づけされ,上下の歯は接触せず安静空隙が存在します(図1).嚥下時には,上島津貴咲/林 亮助なぜ,子どもの口腔機能を診るのか口腔機能と歯列の成長子どもたちの口腔の現状とは

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